「データ活用」成功のコツは、冷蔵庫にある食材で手早くご飯を作る感覚に近い。

 

最近「データの活用」に関する仕事が増えてきたので、
今日はその中から見えてきた、成功率を上げるコツを共有します。

 

「商品開発に顧客視点を取り入れたいので、顧客情報を収集・活用できる仕組みを新たに作りたい。」などの相談が多いのですが、
まずは、プロジェクトの開始を再度検討する/場合によっては見送る方が良い場合から説明します。


やめた方がいいケース1

・現在手元にないデータを新たに取得することから始める。

顧客情報の取得方法は、Twitterを見る、店舗に立つ、お客様インタビューなど、いくらでもあるのに、現状データがないのであれば、実は顧客情報がそこまで必要だと思ってない可能性が高い。

あと、自動で貯まり続けるデータでない場合は、取り続けることに多大な労力がかかることが多いので、継続的にデータが取れないことが多い。


やめた方がいいケース2

・活用目的と取得するデータが明確に決まっている。(決まりすぎていて、変更できない)

データが何に活かせるかは、実際にデータを取得してみて初めてわかることが多い。

やってみる前に目的とデータをガチガチにすると、
プロジェクトの途中で身動きが取れなくなることがある。
(場合によっては成功を演出するという不毛な努力をすることになってしまう。)

 

プロジェクトを開始する前に、まずは「本気で必要としているのか?」「当初の目的とは異なる結果になることを受け入れられるのか?」を正直に確認することが重要だと思います。特に「事業の戦略上の要請」「これからの時代はデータ活用」等の言葉からプロジェクト検討が始まった場合は、特に念入りに確認した方がよいかと。

 

上記をクリアした上で、コツ編に移ります。

 

まずは1つ目のコツはプロジェクトのはじめ方です。

コツ1:ゴールは多く、データは幅広く、手軽に始める

 成功したプロジェクトの勝因を振り返ると、共通して3つの要素がありました。

・担当者が 現場のお困りごとをたくさん知っている。
 (現場に詳しい、現場スタッフと仲良し。)

・自社にあるデータを広く自由に使える。
 (使えるデータが制限されていない)

・できそうなことから手軽に始める。
(大規模投資しない、現場に「データ収集して」とか言わない、難しいことはしない。)

理由は、当たり前なのですが、以下の通りかと考察しています。

・現場で解決したいお困りごとが多いほど、「的」が増える。

・扱えるデータが増えるほど、出せるアウトプットの幅が広がる。

・手軽に始められると、試行錯誤や失敗が許されたり、少しでも役に立ったら何でもいいと評価されるので、現場の役に立つことを素直に追求できる。

図示すると、以下のとおり

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続いて、2つ目のコツはプロジェクトの成果を大きくするコツです。

 

コツ2:最初は小さな成果から、成果は徐々に大きくしよう。

 
プロジェクトの最初の方はリソースが足りないため、大きな成果を狙ってもうまくいきません。

↓リソースが足りない例
・データが足りない
・現場の信頼がない(お困りごとが集まらない、データの取得/利用の協力が得られない)
・経営からの信頼がない(人、金、時間の投資が限定的)
・担当者のスキル・経験が足りない
 
なので最初のうちは、「現場の具体的な問題を、手元にあるデータで解決する」ことに注力して、小さな成果を積み重ねながら、上記の4つリソースを増やしていくことが重要だと思っています。
 
いつもこの感覚がうまく伝えれないので、料理の例で例えると、
自分が料理人で、お腹がすいているお客様が来たとして、
「作れるかどうかわからないご馳走を時間をかけて作ろうとして失敗する」よりも
「冷蔵庫の中にあるもので自分が作れるものを速く作って出す」ほうが
次に繋がる(≒再来店)の可能性が高いことと一緒だと思います。

 

お腹が減っている人(困っている人)を探して、ありもの(今あるデータ)を使って、
速く料理を出す(出せるレベルで集計・分析結果を示す)ことが重要です。
(伝わるでしょうか。。。)

 
小さく始めてリソースを集めながら、大きくしていくアプローチは、遠回りに見えますが、このやり方が結果として一番速くプロジェクトの成果が大きくなりました。
大きな成果をすぐに出したくなる気持ちはわかりますが、「出来ないことは置いておき、できることに集中する」ことをぜひ心の片隅に置いておいてください。
 


余談:経営者の皆様へ

若干蛇足ですが、経営者の善意が、成功し始めたプロジェクトを失敗に追い込んでしまったことを少なからず見てきたので、最後に触れさせてください。

それは、「過剰な期待・投資をプロジェクトにしてしまうこと」です。
例えば、

・プロジェクトの人数を倍にする

当初のメンバーが新人のサポートで忙殺される、チームワークが崩れる、新人に仕事を敢えて作る必要が出てくる。

・多額のお金を投資する

金額が大きいほど、成果・説明責任が大きくなる。探索的な仕事なので、
成果が出ないと、無理に成果を演出しなければならなくなる。
また、お金を使うのも時間がかかる。

データ活用プロジェクトは、担当者の経験・スキル、担当者内や現場とのチームワーク、データ取得の仕組み構築など、時間がかかるものが多く、成長スピードを予測するのは当初困難です。
なので、「欲しいものがあったら言って来いよ」くらいの緩さで暖かく見守っていただけると良いかと思います。
 


最後に、データの活用は多くの企業にとって価値のあるものだと思いますが、
探索的であるため、直接的な投資を増やしても成果に直結しないという難しさがあります。

ただ、無理のない範囲で、一歩ずつ薦めることで、顧客価値の向上や、従業員の生産性向上/楽しさ向上を生み出す大きな可能性があるものだと信じています。
 
もっとデータを活用したいと思っている方々にとって、
少しでも役に立ったなら幸いです。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。