「ESが上がるとCSが上がる」という都市伝説。というか疑似相関について。

「CSの向上のために、まずはESを上げるべきだと思う。」「ESは上がった気はするのだが、業績に結び付いている気がしない。なぜだろう?」という相談をよく頂きます。

多くの方との会話を通じて、私個人としては、「ESが上がれば(自動的に)CSが上がる」は都市伝説であると考えるようになったので、今日はそのことを書きます。

 ■よく伺う相談内容

ざっくりいうと、「ESを上げるために、有休促進やリモートワークやフレキシブルな勤務形態を導入したが、かえって生産性が下がり、顧客クレームも増えた。」
「CSを上げるには、まずはESからということで、一律でベース給を上げようと思うのだけど、どう思いますか?」的なことが多いです。

この話を図示するとこんな感じでしょうか。

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この時、ES向上とCS向上の因果関係の話になると、ふわっとした会話になることが多いです。(「従業員がご機嫌に働くと、顧客もご機嫌になる。。。」とか)

私の個人的な考えになりますが、その背景には、「ESが上がると(自動的に)CSは上がる」という思い込み(固定観念?認知スキーマ?)があるのではなないでしょうか?

■上記を顧客目線で考えてみると

当たり前のことですが、CSが上がるのは、提供されるプロダクトやサービスから得られる価値が上がった時なので、極論すると、顧客から見たときの、取引先の従業員のESはどうでもいいと思います。
(楽しそうに働いている人が担当なのは、顧客にとっての一つの価値ではありますが。。)

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■ESが上がるとCSが上がるを実現するには

結論から先に言うと、従業員に対して、「より楽に、より顧客に感謝される/売れる状態**を提供できたときに、「ESが上がるとCSが上がる」状態になるのではないかと考えています。

従業員に提供するものは「システム」「ツール」「情報」「他のメンバーからのサポート」などいろいろなものがありますが(仮にこれらを「支援の仕組み」と命名します)、いずれも、従業員の業務をより生産的なものにするということで共通しています。

■ESが上がるとCSが上がるフロー

従業員に「支援の仕組み」を提供

従業員が「より楽に顧客に喜んでもらえそう」と展望が持てる。テンションが上がる(ES向上)

顧客が実際に喜ぶ(CSの向上)

顧客からの感謝の言葉で従業員が喜ぶ(ES向上)
業務が楽になる場合、さらに多くの顧客に商品サービスを提供

喜ぶ顧客が増える(CS向上)

売上UP、従業員の報酬増える(ES向上)

■ESが上がるとCSが上がる疑似相関の正体

上記ケースの場合、ESとCSの背後に「支援の仕組み」があり、これがまずはESを向上させます。その後、実際の業務を通じてCSが向上がするので、傍から見ると「ESが上がるとCSが上がる」ように見えるのではないかと考えられます。 

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■まとめ

・報酬や休みを増やして仮にESが上がったとしても、CSは上がらない。
・「ESが上がるとCSが上がる」状態が実現されるのは、CSを向上に繋がる支援の仕組みを従業員に提供できたとき。

 

最後に、CSの向上のためには、ESの向上が必須な訳ではありませんが、
支援の仕組みの導入による「ESが上がるとCSが上がる」構造は、事業成長の強力な推進力となる、かつ、競合がマネしにくい隠れた競争優位に繋がるので、ご一考の価値はあるかと存じます。

本日は、以上です。

■補足

*「楽に」と言う言葉はあまり上品ではなく、「効率的に」と言った方が上品かもしれませんが、現場の実感からすると、やはり「楽に」の方が実態に近いので、その言葉を使いました。